第5回 神戸看護学会 学術集会長 挨拶

 このたび2020年10月24日(土)に、神戸市看護大学にて第5回神戸看護学会学術集会を開催させていただくことになりました。ここに謹んでご挨拶申し上げます。
 学術集会のメインテーマは「看護の原点回帰と新たなる挑戦」と致しました。現代は再生医療といった医療技術の進歩だけでなく、ICTなどの情報技術やロボット工学など、様々な技術革新を保健医療福祉分野に取り入れようとする動きがみられます。私たち看護職には、時代のニーズに即してこうした新たな技術を取り入れ、新たな看護を模索し、看護の対象となる人々に恩恵をもたらす役割と責任があります。
 しかし、看護以外の分野の新たなものを取り入れていくことで、看護の本質を見失っていく危険性も孕んでいます。その一例が、これまで医師が行っていた特定行為を看護に取り入れる特定行為研修制度です。この制度は看護の役割をしっかりと認識し、看護の役割拡大に繋げることができれば、看護の発展につながる可能性はあると思います。しかし研修修了者の約6%が看護部ではなく、医局に在籍しているという調査結果もあり、一部ですが看護の本質から外れて、医師のタスクシフトやワークシェアとして医師の働き方改革に利用されているのではないかと思える部分も垣間見えてきます。結局、特定行為研修制度が、看護の役割拡大に繋がるのか、医師不足解消の手助けをするのみとなるのかはすべて、看護師自身が、看護の原点とは何かを突き詰めて考え、新たな時代の変化に対応して、どうあるべきかを吟味していけるのかにかかっているのだと思います。
 「原点回帰」とは、物事が進行していく中で迷った時、どのような方向性を選択するべきなのかを考える時などに、本来の意義や目的などを確認するために行われるものです。したがって本学術集会では、看護の新たな可能性に挑戦していくためにも、看護の本質、看護の原点とは何かについて、立ち返って考えてみたいと思います。それはごく当たり前のことで、意識せずに日々の看護実践の中で行われていることもしれません。そこに包含されているケアの意味を再認識することが、大切だと考えています。そうすることで看護の本質からはずれることなく、新たなことを取り入れていけると考えています。
 新たな時代における看護の挑戦については、看護の重要性に対する社会の認知度を高め、発展させていく上で大切なことですが、今回はICNの元会長として、世界の看護界でリーダーシップをとってこられたご経験をお持ちの本学の南裕子新学長に「新たな時代における看護の構想力」と題する教育講演でお話いただきます。参加者の皆様とともに、看護の原点を大切にしながら、未来を切り拓いていく看護の夢や構想力について考えていくことができればと思います。
 さらに上記のメインテーマにもとづいた、シンポジウムや交流セッションの企画も準備していますので、多数の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

神戸市看護大学 急性期看護学分野 江川 幸二